第56章

山田澪は首を振って、今の気持ちをどう表現すればいいのか分からなかった。

彼女は佐藤凛のことが心配で、彼女に試合に行ってほしくなかった。

佐藤凛はため息をついて、ソファに座り、コーヒーテーブルの上のミカンを手に取り、顔を傾げて山田澪を見た。

「妊娠のこと、彼に言ったの?」

山田澪は一瞬固まり、首を振った。

「なんで言わないの?」

もちろん、彼が知ったら嫌がるんじゃないかと恐れていた。前回のように、おろすように言われるんじゃないかと。

「澪ちゃんは彼と離婚もしないし、子供の存在も知られたくないなら、どうやって隠し通すつもり?」佐藤凛は手の中でミカンを投げ上げながら、にこにこと彼女を...

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